【テニス】メディシンボールを使ったトレーニングの効果

テニスをしている皆さんは、メディシンボールをご存知ですか?

メディシンボールは、通常のボールよりも重いボールで軽いものは1kg程度、重いもので10kg以上など、様々な重さ・種類があります。

このメディシンボールを利用し、テニスコートの中やジムの中で様々なトレーニングを実施できます。

今回は、このメディシンボールを利用したトレーニングがテニスの何に有効なのか、具体的な使い方とその効果についてお伝えしていきます。

メディシンボールとは?

メディシンボールの画像

まずは、メディシンボールって何?どんな種類があるの?という素朴なところから解決していきましょう。

メディシンボールは、通常よりも重いボールです。

重さは、軽いものは1kg前後、重いものでは10kg以上の重さがあり、柔らかいもの、硬いものなど様々な種類のものがあります。

大きさもまちまちで、バスケットボール程度のボールもあれば、テニスボールや野球のボールと同じくらいの大きさのボールもあります。

ボールというだけあり、投げたり取ったり地面に叩きつけるなどして、体の使い方の学習にはうってつけのトレーニング器具です。

テニスコートで練習前のトレーニングとして、プロ選手も使用したりしています。

テニスでメディシンボールトレーニングを実施するメリット

メディシンボールトレーニングのメリット

テニスにおいてメディシンボールを使ったトレーニングを実施するメリットは、主に以下の4つと考えています。

テニスでメディシンボールトレーニングを用いるメリット
  • テニスの動作に類似した動きを強化できる
  • 力の発揮の仕方が上手くなる
  • 適度に負荷をかけられ、練習前の調整に良い
  • 「減速」の能力を上げることができる

一つずつ解説していきます。

テニスの動作に類似した動きを強化できる

テニスは、フォアハンドやバックハンドといったストローク動作から、サーブなど動きがあまりないところからの大きな力の発揮、ボレーなどでの素早い切り返しなど、様々な動きを行います。

そのどれもが、「伸張反射」を利用し、下半身〜上半身への力の連動性が求められる動作です。

伸張反射とは、筋肉や腱などの組織が引き伸ばされた際、不随意的に縮めようと戻す働きです。

この働きを上手く利用すると、0からスタートするよりも大きな力を生み出すことができ、素早く切り返したり、素早いスイングが実現します。

テニスにおいて0からスタートする、という動きはほとんどなく、基本的にはスプリットステップ用いて組織を伸び縮みさせながら動いています。

また、陸上の短距離走のような直線だけの動きがほとんどなく、下半身〜上半身までの連動性を高めるトレーニングのみではなく、力に耐えうる筋力や、力のベクトルを変え、素早く力を立ち上げる能力も必要です。

それらテニスの動作に必要な動きや筋力・パワーの発揮の仕方を学習できるのが、メディシンボールトレーニングのメリットの一つと言えるでしょう。

力の発揮の仕方が上手くなる

力の発揮の仕方が上手くなり、力強いボールを打てたり、切り返しのスピードが上がる可能性があります。

パワー=力(筋力)×スピードで、重いものを素早く動かす能力です。

これは、スイングスピードを上げて球速を上げるにも、自身の体を素早く移動させて切り返すのも重要な能力です。

ある程度の筋力がついてきたら、メディシンボールを用いてテニスプレー中の動作にフォーカスしたトレーニングを実施するのも、パフォーマンスを上げる一つの手段になります。

適度に負荷をかけられ、練習前の調整に良い

練習や試合前にメディシンボールトレーニングで体に刺激を入れておくと、テニスの動作がスムーズになったり、楽にラケットを振ることができるようになります。

テニスが上手くなるための練習はもちろん大事です。

でも、テニスの練習だけでは体の使い方は上手くならない可能性があるし、かといって練習前にトレーニングで過度に負荷をかけると練習に使う筋力や体力が余らない・・・

こんな歯痒い状況の解消も、メディシンボールを利用したトレーニングが活用できます。

例えば、後ほど解説するメディシンボールスローというボールを投げるトレーニング。

メディシンボールスロー

通常のラケットよりも重いものを投げる動作では、より大きな力が必要です。

ラケット程度の重さであれば腕のみでスイングすればなんとでもなりますが、5kgや6kgといった重いボールを投げる場合、全身の大きな筋肉を効率良く働かせなければ、投げられません。

メディシンボールを投げる動きによって、体幹周りの大きな筋肉が動員され、全身を使ったスイング動作を実現できます。

結果として、ラケットをスイングする際の適切な体の動かし方を無意識的に学習でき、スイングスピードが上がる結果、より力強くて速いボールを打てる可能性があります。

練習の効率を上げるには最適なトレーニングかもしれません。

「減速」の能力を上げられる

皆さんは「減速」について考えたことはありますか?

原則はテニスに限らず、あらゆるスポーツで大事なスキルです。

減速できるからこそ全力で加速できるし、素早く方向転換ができます。

テニスでは、様々な方向へ瞬時に移動したり、股関節や体幹をはじめとした全身を素早く伸び縮みさせて、力強いボールを打ちます。

ダッシュしてボールを追いかける→減速→一瞬止まる→股関節や体幹を伸ばしてボールを打つ→次への動き、の順番で動きますが、この時に重要になるのが減速のフェーズです。

減速できるから全力でダッシュして追いかけることができ、素早く止まって股関節や体幹を使ってボールを打つという動作までつなげられます。

メディシンボールを利用と、通常のテニスの練習ではかけられない負荷をかけ、素早く減速し、力強いボールを打つ、素早く次の動きに繋げる、といった動作の改善に繋げられるのです。

テニスのメディシンボールを使ったトレーニング例

それでは、テニスのためのメディシンボールトレーニングをご紹介していきます。

重さはその人の体力・筋力レベルによって使い分けて頂きたいですが、女性でしたら1~2kg、男性であれば2~3kg程度が初心者の方でも扱いやすいかと思います。

今回は、以下の2つのトレーニング方法をお伝えしていきますので、もし購入される機会があれば、試しに実施してみてください!

※怪我などをされましても、こちらでは保証できかねますので、自己責任で行ってください。

メディシンボールサイドスロー/股関節

ストロークなどの動きで股関節を使いやすくするメディシンボールサイドスロー股関節Ver.。

股関節を後ろに引くヒンジ動作、そして、股関節を使って上半身に力を伝えるトレーニング。

股関節主体でラケットのスイングができない方、もっと腰を回して、と言われる方におすすめです。

(正確には、腰はほぼ回りません。比喩表現で使っている方もいると思いますが、あくまで動くのは股関節です。)

メディシンボールサイドスロー/股関節Pのやり方
  1. 脚を肩幅に開き、メディシンボールを体の前で持ち、横向きになる。
  2. 軽くお尻を引いて股関節、膝、足首を曲げ、軸脚(後脚)でタメをつくりながら、メディシンボールを軸脚側で構える。
  3. 軸脚→反対側に体重を乗せるよう、軸脚の股関節を伸ばしながらメディシンボールをプッシュする要領で押し出して投げる。
  4. 上記を繰り返す。

メディシンボールラテラルホップ&リバウンドローテーションスロー

着地時に下半身〜上半身を安定させつつ、減速して次の動作に早く移る能力を上げ、素早い股関節の動きを鍛え、力強いショットを打つためのトレーニングです。

テニスに限らず、様々なスポーツのパフォーマンスを上げるには、まず減速の能力を上げなければなりません。

減速できなければ加速ももちろん難しいですよね。

止まることができないのだから、それ以上のスピードで加速するのは難しいです。

素早い方向転換能力と判断、ヨミが必要となるテニスだからこそ、着地時の大きな負荷に耐えられる体を作って練習に望むと、スキルアップへとつながるのではないでしょうか。

メディシンボールラテラルホップ&リバウンドローテーションスローのやり方
  1. メディシンボールを体の前で持ち、脚を肩幅より広く開く。
  2. 大きく軸脚側に振ると同時に軸脚の片脚立ちになり、片脚スクワットのような姿勢をつくる。
  3. 振り子のように反対側へ大きく下半身〜上半身を振り、飛ぶ。
  4. 着地と同時に元の軸脚側へ全力で飛び、再び片脚立ちになる。
  5. ステップして横から大きくボールをスローイング。

動画はこちらからご覧になれます。

メディシンボールトレーニングのみで得られない能力

メディシンボールを利用したテニスのトレーニングについてご紹介しましたが、これは万能なトレーニングではありません。

もちろん、ボールを投げる、取る、持ったまま動く、などの多様性に富んだトレーニング器具ではありますが、メディシンボールを使ったトレーニングだけでは上げられない能力があります。

この章では、メディシンボールトレーニングのみでは、テニスに必要な能力を上げられない可能性があります。

その理由は以下です。

  • 筋力の絶対値は上がらない
  • 動作の巧緻性や姿勢

筋力の絶対値は上がらない

まず、メディシンボールを利用したトレーニングでは、筋力を上げるための負荷が、ウエイトトレーニングに比べて圧倒的に不足する可能性があります。

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テニスのパフォーマンスを上げるのに筋力トレーニングは必要ない、という人もいるかもしれませんが、それはあり得ません。

走る、止まる、打ち返すなどの体に大きな負荷がかかるスポーツにおいて、絶対的な筋力は必須です。

テニスにおいて、相手のコートへ1球でも多くボールを返し、試合で勝つ、長くラリーを続けるには、素早く切り返し、ボールに追いつく「スピード」が必要です。

スピードは、筋力(最大筋力)との相関性が高いため、最大筋力(最大発揮できる力)を高めることが必要です。

例えば、コートサイドに振られた場合でも、下半身と体幹を使って素早く切り返さなければ、相手にボールを決められてしまいます。

切り返す際に一瞬動きが止まる瞬間がありますが、止まる時に足にかかる負荷は体重の6~10倍。

その大きな負荷に耐え、素早く切り返すための力を立ち上げる速度(パワー:力の立ち上がり速度)を上げる必要があります。

筋力の絶対値が低い状態でパワーを上げようとしても、パワーの上限は決められてしまい、必要な能力を上げられない可能性があります。

メディシンボールを利用したトレーニングのみでは、機械的刺激(数字的な刺激)が少なく、やはりウエイトトレーニングでかけられる負荷よりもはるかに少ない刺激となります。

テニスをしていれば走ったり打ったりするので筋力が上がる、といった意見がありますが、メディシンボールトレーニングのみでは負荷が不足し、求めている効果や成果が出ない可能性があります。

逆に、通常の最大筋力を上げるようなウエイトトレーニングを既に実施しており、適切なテクニックを持っている(トレーニングの)場合は、メディシンボールを利用したトレーニングでさらにテニスのパフォーマンスを上げられる可能性があります。

結論、ウエイトトレーニングなど負荷をかけられるトレーニングで最大筋力を上げるのも、メディシンボールを使ったトレーニングで素早い動きを習得することも必要になるのです。

ご認識の方も多いかと思いますが、「このトレーニングをやっておけば良い」はありませんので、全体を見て穴を埋めていく、全体の能力を上げていくことが、テニスにおいて怪我をせずにパフォーマンスを上げるのに必要なのです。

動作の巧緻性や姿勢

メディシンボールを使ったトレーニングは、主にプライオメトリクストレーニングと言われる手法に分類される種類が多いです。

プライオメトリクスでは、爆発的な力を発揮する能力を上げることを目的とし、細かな動作や根本となる姿勢の改善は難しいと考えます。

(もちろん、使い方によっては基盤を作るエクササイズも実施できますが、それなら使わなくても良いのでは?という種類のものが多くなります。)

例えば、「肋骨と骨盤の位置」。

肋骨、骨盤と反り腰

肋骨と骨盤の位置によってお腹の圧、すなわち腹圧が保たれるかが決まりますが、下半身から上半身への力の伝達に重要です。

下半身から上半身に力を伝えるには、足裏全体で地面を押すことが大事です。

そのためには、お腹の圧を適切に保ち、重心位置を下げる必要があります。

テニスにおいて必ずしも重心を落としすぎる必要はありませんが、腹圧を保ち、重心位置をコントロールできる能力は、テニスのパフォーマンスに必須と考えます。

その能力をメディシンボールを使ったトレーニングのみで構築できるかと言えば、経験上まあ難しいと言えます。

メディシンボールトレーニングでの効果を最大化し、テニスパフォーマンスへの転換には、それ以前の下処理として骨盤と肋骨を整える「呼吸エクササイズ」を取り入れる必要があると言えるでしょう。

メディシンボールを使ったトレーニングの効果まとめ

テニスのスキルアップに、メディシンボールを利用したトレーニングはよく活用されます。

パフォーマンスを上げるのに非常に効果的になり得る手法ではありますが、基礎的な筋力を上げられない可能性がある、動作の巧緻性や体の基盤を作るのが難しい、などのデメリットもあります。

RPSプライベートテニスでは、メディシンボールでのトレーニングを活用しつつ、呼吸エクササイズやピラティスエクササイズを用いた可動域向上、バランスを整える体の基盤づくりから、ウエイトトレーニングを用いた基礎筋力アップ、オリンピックリフティングを用いたパワー発揮能力向上トレーニングなど、テニスに必要な体づくりを全て網羅したプログラムをご提供しています。

テニスの練習をしていてもなかなか上手くならない、怪我して痛みが引かない、思うような動きができない、といった様々なお悩みに対応可能です。

ご興味のある方は、是非トライアルレッスンへお越しくださいませ。